事例
業務コンサル・事例 - 事業戦略:アイテム別収益管理
利益を最大化させるプロダクトミックス戦略
プロダクトミックスとは、企業が製造・販売する製品や製品ラインのことで、その市場を取り巻く環境変化に応じて組み合わせを変え、利益を最大化する必要があります。今回の事例では、世界的な生産方式の変化、ECサイトの拡大などに適応した、プロダクトミックス戦略の事例を紹介します。
プロジェクト背景
多用途の産業用フィルターを扱うH社
H社は主に生産設備で使われるフィルターを製造・販売するメーカーです。食品原料の生産設備から始まったフィルターは、医療用や自動車部品など幅広い業界で使われるようになりました。
用途拡大によってビジネスチャンスが増加し、顧客要求に対応しながら製品仕様を増やした結果、製品別・客先別で2500を超えるアイテム数となっていました。製造工程は同じでも業界ごとに価格設定が異なり、原価構造も正しく把握できていないことから、売上は増えても営業利益が減っていくという状態が続きました。そして営業利益は赤字に転落。さらに、海外メーカーとの品質・価格競争が激化し、撤退を余儀なくされる販売エリアもあり、販売戦略の見直しが急務となっていました。
市場を取り巻く環境変化
市場規模が3000億円のこの市場では、新製品開発や新設備への投資はあまり行われません。また、高品質で安く効率的に生産する「集約生産」から、製品が消費される地域で生産する地産地消の流れが進み、需要の大きい地域で生産・販売をしている企業の優位性が高くなりました。
販売チャネルにも変化が起こりました。現地支店・販売代理店・エージェントによるチャネルのほか、生産財を扱うECサイトのチャネルも普及し、より安価な製品を求める顧客は、スペック情報をECサイトで確認して容易に仕入先を変更する事ができるようになったのです。
市場成長率の低い市場では、自社の優位性がでる販売地域の選定や、品質・価格・納期のいずれも勝てない市場の撤退など、生存戦略が大きな流れとなっていました。
<市場環境>
- 世界市場における地産地消の流れ
- 生産財のECサイト普及による販売チャネルの変化
- 成長戦略から生存戦略へのシフト
環境変化への対応ポイント
海外市場へ生産拠点をつくっても投資回収が難しいため、既存生産拠点による体制を維持し、日本国内市場の囲い込みを指向しました。また、海外市場に関しては、拡大は狙わないもののECサイトを活用しチャネル変化に対応。生存戦略として、現有の生産資源(ヒト、モノ、カネ、情報)を活用しながら、利益の最大化をはかるプロダクトミックス戦略を中心にコンサルティングを実施しました。
アイテム別の採算性を可視化し、社内の管理指標を設定
問題点 | 対応ポイント |
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採算性の悪いアイテムの撤退判断をし、利益の得られる製品に現有資源を集中
問題点 | 対応ポイント |
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活動成果とポイント
※売上高は現状維持
※ 全製品における営業利益率が0.1%以上の割合
アイテム統廃合数(削減率) ・・・ 35%
※ 全体の利益率改善に寄与
プロダクトミックスによる営業利益改善の3つのポイント
- 限界利益が赤字の製品を改善(変動費も回収できず売れば売るほど営業利益の赤字が膨らむ)
⇒ アイテム統廃合の促進、値戻し・値上げ、外製化、原価低減 - 限界利益が黒字、営業利益が赤字の製品を改善(固定費の回収に寄与している為、アイテム削減の対象にはならない)
⇒ 販売数量見直し、値上げ、営業見積り基準の是正、量産効果による原価低減 - 採算性の良い製品の販売比率を上げる
⇒ 採算性の高い(時間当り限界利益率の高い)製品へ販売移行、アイテム統廃合、営業評価基準(売上ではなく利益など)の見直し、生産振分基準の設定
今回の事例紹介では割愛していますが、値上げやアイテムの販売中止は客先への丁寧な交渉が必要となります。また、アイテムによっては客先に入り込む為にあえて赤字にする販売戦略を意図している場合もあります。これらの具体的な販売の取り組み事例については別の機会にご紹介したいと思います。
他業界でのプロダクトミックス戦略改革事例
食品、化学、非鉄金属、自動車部品、電子材料など